債務の承認で時効がリセット?少額返済や口頭対応の落とし穴と回避策

債務の承認で時効がリセット?少額返済や口頭対応の落とし穴と回避策

債務の承認で時効がリセット?少額返済や口頭対応の落とし穴と回避策の詳細について、専門知識を取りまとめてご紹介します。

実務上、最も過酷な落とし穴と言えるのが「すでに5年の時効期間が経過した後に債務の承認をしてしまった場合」の扱いです。「すでに時効を迎えていたのだから、後から認めても無効ではないか」という疑問が生じますが、日本の裁判実務はこの点に関して極めて厳格な判断を下しています。

リーディングケースとなっているのが、最高裁判所昭和41年4月20日判決(民法 債務の承認 判例)です。この判例において最高裁は次のような法理を確立しました。

『時効完成後に債務者が債務の承認をした場合、債務者が時効完成の事実を知らなかったとしても、債権者はもはや時効の主張をされないものと信頼するのが通常である。したがって、その後に債務者が時効を援用することは、信義誠実の原則(信義則)に反し許されない』

つまり、たとえ最終返済日から7年や8年が経過して法的に時効が完成していたとしても、債権者からの督促に対して「近いうちに払います」と一度でも口頭で約束してしまうと、後から「調べたら時効だったから支払いません」と主張することが封じられてしまうのです。この判例の存在こそが、督促を受けた際に一切の自己判断を排除すべき最大の理由です。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。