物語の舞台は1945年(昭和20年)8月、終戦直前の太平洋上空。主人公の野上少尉は、自ら志願してロケット推進式特攻兵器「桜花」の操縦員となった若きエリート搭乗員です。彼は母機である一式陸上攻撃機(通称・一式陸攻、米軍コードネーム「ベティ」)の胴体下に吊るされ、米機動部隊の空母群を目指して出撃します。
野上を運ぶ一式陸攻の機長・山野少尉をはじめとする搭乗員たちは、死にゆく若者を送り届ける痛恨の任務に苦悩しながらも、彼を確実に目標の上空まで届けるため命を賭して敵の防空網へと突入します。無数の米軍戦闘機「F6Fヘルキャット」による熾烈な迎撃と対空砲火の中、一式陸攻は被弾を重ね、乗員たちが次々と斃れていきます。
機体が火を噴き限界に達する瞬間、山野機長は野上を逃がすためではなく、任務を完遂させるために桜花の切り離しレバーを引きます。「桜花、射出!」の号令とともに母機を離脱した野上少尉は、3基の固体ロケットに点火。猛烈な加速とともに時速800kmを超える音速に近い領域へと突入し、米艦隊の対空弾幕をものともせず、敵空母の舷へと吸い込まれるように激突します。
激しい大爆発の余波の中、レーダー室で野上機を追跡していた米軍将校が呟く「あれは人間が操縦していたのか…」という戦慄の台詞、そして野上少尉が突入直前に抱いていた個人的な無念の情景が重なり、物語は静かに幕を下ろします。国家の勝敗を超え、ただ「生きるはずだった個人の尊厳」が機械の一部として散っていった虚しさが、観る者に強烈な衝撃を残します。