「昼に飛んでいて羽を立てて止まるから蝶だ」と即断すると、自然界の多様性に裏切られることになります。その代表格が、日本各地の森林で見られるイカリモンガの特徴です。
イカリモンガは、昼間に活発に飛び回り、花を訪れて蜜を吸い、静止するときは羽を背中側でピタリと垂直に立てます。さらに触角の先もわずかに太くなっており、遠目にはタテハチョウの仲間にしか見えません。しかし、前羽に錨(いかり)のようなオレンジ色の紋様を持つこの昆虫は、分類学上れっきとした「蛾」です。マダガスカル島に生息し、世界一美しい昆虫とも称される「ニシキオオツバメガ」も、太陽の下を鮮やかに舞う昼行性の蛾です。
また、昼行性と夜行性の違いだけでなく、変態のプロセスにおける繭と蛹の違いにも例外が存在します。一般に「蛾は糸を吐いて繭(まゆ)を作り、その中で蛹になるが、蝶は繭を作らず裸の蛹になる」と信じられていますが、アゲハモドキのように繭を作らない蛾や、ウスバシロチョウのように地表の落ち葉を集めて薄い繭を作る蝶も確認されています。
さらに、ガーデニングや野山歩きで気になる幼虫や毛虫の見分け方についても同様です。毛に覆われた「毛虫」は蛾の幼虫であることが多いものの、タテハチョウ類の幼虫のように鋭いトゲ状突起を持つ蝶の幼虫もいれば、シャクトリムシのように完全に毛がない蛾の幼虫も無数に存在します。毒針毛を持つ危険な種はごく一部(ドクガ科やイラガ科など)に限られるため、外見だけで過度に恐れる必要はありません。