野登トンネルの歴史を振り返ると、そこには土木工学上の凄まじい苦闘がありました。鈴鹿山脈東麓の地質は極めて複雑で、花崗岩の激しい破砕帯と膨大な地下水脈を抱えていたため、2019年の開通に至るまで国内有数の難工事区間として関係者を悩ませました。
掘削中には突発的な大量出水や切羽(掘削先端面)の崩落リスクと常に隣り合わせであり、最新の地盤改良工法と先進ボーリング技術を駆使して慎重に掘り進められました。こうした過酷な施工環境の記憶が、開通後に一部で「工事中に事故があったのではないか」という尾ひれ付きの噂へ変化した一因とも言われています。
現在、トンネル内には数十メートル間隔の非常口・避難連絡坑、高解像度ITV監視カメラ、大型ジェットファン、自動火災検知器が隙間なく配備されています。万一の火災や重大事故発生時には、即座に換気制御と避難誘導が行われる世界最高水準の防災インフラが構築されています。