1970年代、お茶の間を釘付けにしたテレビアニメ『母をたずねて三千里』において、安田の手腕はひとつの頂点に達する。地中海の眩しい日差し、アルゼンチンの荒涼としたパンパの土煙、貧民街の湿り気を含んだ陰影。海外ロケハンで得られた空気の質感をセル画の上に再現するため、彼女は従来のテレビシリーズでは考えられないほど繊細なカラーパレットを構築した。
毎週の締め切りに追われる過酷なスケジュール下にあっても、安田は決して色の設計を簡略化しなかった。主人公マルコの心情が変化するたびに衣服のトーンを微調整し、旅の過酷さを埃っぽい中間色で表現する。その徹底した画面作りは、テレビアニメの表現力を劇的に押し上げ、子ども向けメディアという枠組みを超えた芸術性を獲得させた。