ネット上のコミュニティやSNSで「Webデザイナーに資格はいらない」と繰り返し語られる背景には、デザインという業務の根本的な性質があります。医師や弁護士のような業務独占資格が存在しないWeb業界では、どれだけ難関資格を並べても、クライアントの課題を解決するビジュアルやWebサイトを納品できなければ1円の価値も生み出せません。
都内の大手Web制作会社でチーフアートディレクターを務める採用担当者は、採用面接の現場について次のように証言しています。
「履歴書の資格欄にどれほど多くの検定名が記載されていても、選考で最初に見るのはポートフォリオのURLです。資格を持っていることと、トレンドを押さえた美しいレイアウトを組み、破綻のないCSSを書けることは全くの別問題だからです。現場が求めているのは『試験の点数が高い人』ではなく『納期内にクオリティの高いWebサイトを公開できる人』に尽きます」
この発言が示す通り、制作現場における評価基準の最上位には常に制作物のクオリティと再現性が位置しています。資格が無意味と断評される最大の要因は、資格取得を自己目的化してしまい、肝心の制作物がおろそかになった候補者が選考でことごとく見送られている現実にあります。いわゆる「資格取得による安心感バイアス」に陥り、現場のニーズと乖離してしまう現象が、資格不要論の強力な論拠となっているのです。