廃墟系心霊スポットのなかでも、長年インターネット上でセンセーショナルな噂の中心となってきたのが、野木病院とホテルセリーヌの2拠点です。掲示板やSNSでは「院長が狂乱して患者を手にかけた」「廃ラブホテルで妊婦が惨殺された」といった血生臭いストーリーが実しやかに語り継がれてきました。しかし、公的記録や当時の地元報道を精査すると、まったく異なる実情が浮かび上がります。
まず、下都賀郡野木町に存在していた巨大な廃墟、通称「野木病院」についてです。ネット上では「結核隔離病棟だった」「人体実験の跡がある」などと誇張されていましたが、実際は昭和期に開設された一般的な民間の総合病院・高齢者福祉関連の施設でした。経営悪化に伴い閉院した後、管財人や所有者の管理下で放置されていたところ、動画配信者や肝試し目的の若者が窓ガラスを割り、医療器具やカルテを荒らすなどの器物損壊事件が多発しました。
地域住民からの治安悪化を訴える苦情や放火の危険性を重く見た関係者および地元行政の働きかけにより、建物は完全解体撤去されました。現地は現在、きれいな更地として整備されており、当時の面影は微塵も残っていません。ネット上で今なお「野木病院の現在」として紹介されている画像や映像の多くは、過去の違法侵入者が撮影した古いコンテンツの無断転載・再生産に過ぎないのが実態です。
一方、日光方面の山中に佇む「ホテルセリーヌ」にまつわる「ホテルセリーヌ事件の真相」も、悪質な都市伝説の典型例です。内部の壁面に描かれた「妊婦の落書き」と、そこで女性が殺害されたという噂がセットで拡散されました。しかし、所轄の警察署や当時の新聞縮刷版をどれほど遡っても、当該施設内で妊婦が殺害されたという事件記録は一切存在しません。
真相は、廃業して無人となったモーテルに侵入した不良グループやストリートグラフィティの描き手が、スリルを煽るために気味の悪い落書きを施し、それを目撃した初期のネットユーザーが「ここで過去に事件があったに違いない」と尾ひれをつけて怪談を捏造したというものです。管理者がフェンスを強化し、人感センサーや監視カメラを導入した現在、敷地内への侵入は即座に110番通報される体制が敷かれています。