境界性パーソナリティ障害を抱える人との交際では、特有の進行プロセスが見られます。ボーダーライン症候群の恋愛パターンを心理分析すると、その多くは「相手の完全無欠な理想化」から幕を開けます。交際初期、彼らはパートナーを「運命の人」「唯一の理解者」と称賛し、全身全霊で愛情を注ぎます。しかし、この強烈な幸福感こそが、後の混乱を引き起こす序章に他なりません。
この極端な振れ幅を生み出しているのが、精神分析で「スプリッティング(分裂)」と呼ばれる精神防衛機制です。物事を「100点か0点か」「絶対的な味方か憎むべき敵か」の二項対立でしか捉えられない白黒思考が恋愛に及ぼす影響は甚大で、ほんの些細な言動がトリガーとなって一変します。たとえば「仕事の都合でデートを30分遅らせた」という日常的な出来事であっても、彼らの内面では「自分はもう愛されていない」「騙されていた」という破滅的な解釈に変換され、瞬時に相手を「最悪の裏切り者」へと格下げしてしまうのです。
この認知の歪みは、本人が意図して相手を攻撃しているのではなく、脆く傷つきやすい自己同一性を守るための無意識の防衛反応です。しかし、受け止める側にとっては昨日までの熱烈な愛が突然の憎悪へと反転するため、精神的な混乱と強いトラウマを残す要因となります。