ファミリー層から頻繁に寄せられる疑問が「なぜスライドドアを備えた7人乗りSUVは発売されないのか」という点です。事実、「7人乗りSUVスライドドア車がない理由」を自動車工学の観点から掘り下げると、SUVというカテゴリーの根本的な設計要件に突き当たります。
最大の理由はボディ剛性と衝突安全性の確保です。SUVは荒れた未舗装路や段差の乗り越え、あるいは高速走行時の強大なねじれ入力に耐えうるモノコック骨格を必要とします。スライドドアを採用すると、ボディ側面のBピラーからCピラーにかけて巨大な開口部が生まれ、車体全体のねじり剛性が劇的に低下してしまいます。
さらに、SUVのトレードマークである大きく張り出したリアフェンダー(タイヤハウス)も障害となります。スライドドアを後方に引き込むためのガイドレールを直線状に配置しようとすると、グラマラスなフェンダーラインと干渉してしまうのです。これを避けるために車幅をさらに広げれば、日本の道路インフラでは扱いきれない巨大サイズになってしまいます。
過去にはスライドドアを備えたクロスオーバーモデル(三菱・デリカD:5など)が一定の地位を確立していますが、純粋なSUVスタイリングと流麗なプロポーションを成立させる上で、従来の横開きヒンジドアの採用は避けられない技術的宿命といえます。狭い駐車場での乗り降りには常に「ドアパンチ」のリスクが伴うことを覚悟しなければなりません。