インターネット上の掲示板やSNSでは、「台本を覚えるのが苦手な俳優=ディスレクシア」「天然キャラのタレント=学習障害」といった安易な憶測が定期的に拡散されています。しかし、芸能関係者への取材や過去の一次資料を精査すると、その大半は事実無根のデマや、他の発達障害との混同であることが浮き彫りになります。
典型的な混同例が、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)とディスレクシアの同一視です。例えば、モデル・俳優の栗原類氏は自身が注意欠陥障害(ADD)であることを公表し、丁寧な自己管理の手法を発信していますが、文字の識字そのものに障害があるディスレクシアとは医学的分類が異なります。また、元TBSアナウンサーの小島慶子氏がADHDの診断を受けたことをオープンにした際も、ネット上では「文字が読めないのでは」という誤った伝言ゲームが発生しました。
さらに悪質なのは、「役作りの台本読みで苦労した」という単なるエピソードが曲解され、「読字障害を抱える日本人俳優一覧」といった信憑性のないまとめ記事に無断で名前が掲載されるケースです。演劇関係者の証言によれば、台本を耳から聞いて覚える手法を取る俳優は珍しくなく、それは表現の深化を狙った個人的なメソッドである場合がほとんどです。本人が公式な場や自著で一切公表していないにもかかわらず、憶測だけで障害のレッテルを貼る行為は、当事者への偏見を助長するだけでなく明確な権利侵害に当たります。
公表の有無を見極める絶対的な判断基準は、「本人が一次情報(公式SNS、記者会見、単独手記、信頼できる大手メディアのロングインタビュー)で病名・特性名を明示しているかどうか」に尽きます。ネット上の風評に惑わされず、正確な事実関係を切り分けるリテラシーが求められます。