下り列車から土合駅に降り立つと、真夏でも気温が15度前後に保たれた冷気が肌を包みます。霧が立ち込めるトンネルホームから改札口を目指すには、壁のように立ちはだかる一直線の階段に挑まなければなりません。
公式記録における階段の総数は486段。内訳は、地下ホームから改札階を結ぶ一直線の主階段が462段、その後の連絡通路と改札口手前の階段が計24段です。主階段の長さは約338メートルにおよび、途中には5段ごとに広めの踊り場が設けられているものの、エスカレーターやエレベーターといった近代的な昇降設備は一切存在しません。
実際に階段を上った来訪者や登山者の生の声を見ると、その過酷さと唯一無二の情緒が浮き彫りになります。
「階段の途中にベンチが設置されている理由が登り始めて3分で分かった。見上げても出口の光が遠すぎて気が遠くなる」(30代男性・観光客)
「谷川岳登山の前にすでに足の筋肉を削られる。しかし、トンネル特有の冷気と風の流れはまるで探検隊になったような高揚感がある」(40代女性・登山歴10年)
途中の壁には「JR東日本からのご案内」として残りの段数や激励のプレートが掲げられており、過酷な昇降運動そのものが土合駅を体験するエンターテインメントとして消費されている実態が窺えます。