『鯨の唄』が収録されたセルフタイトルのアルバム『Mrs. GREEN APPLE』が世に出たのは2017年1月11日のこと。当時、作詞・作曲を一手に担う大森元貴はまだ20歳になったばかりでした。メジャーデビュー以降、『Speaking』や『サママ・フェスティバル!』といった突き抜けるように明るいアンセムで一気にスターダムへ駆け上がったミセスですが、その華やかな表舞台の裏側で、大森の心には猛烈な葛藤と孤独が渦巻いていました。
大森元貴は当時のインタビュー等で、自身の創作活動の根底には常に「誰にも理解されないかもしれない」という根源的な孤独感と、それでも他者と繋がりたいという切実な渇望があることを明かしています。メジャーシーンの期待に応え、大衆を熱狂させるポップアイコンとしての振る舞いを求められる一方で、自らの内側に巣食うダークサイドや死生観を吐き出す場所が必要でした。そうして生み落とされたのが、アルバムの終盤に位置する『鯨の唄』です。
商業的なタイアップやキャッチーなサビの繰り返しといった制約を完全に脱ぎ捨て、ひとりの表現者として「人間の脆さと美しさ」を余すところなく注ぎ込んだ本作。この制作背景を知ることで、大森が絞り出す一音一音に込められた切実さが、聴き手の胸にダイレクトに突き刺さってきます。