『100かいだてのいえ』が既存の絵本と決定的に異なるのは、本を縦に開いて上(あるいは下)へと視線を誘導する大胆な空間構造です。作者のいわいとしお氏は、メディアアーティストとして国内外で数々のインタラクティブな作品を手がけてきた経歴を持ちます。著者が過去の取材や制作秘話で明かしている通り、この作品の原点は「自身の娘のためにダンボールで作った手作りおもちゃ」や「お風呂場で娘と1から100まで数字を数え上げた原体験」にありました。
子どもの目線に立つと、見開きいっぱいに描かれる縦のパノラマは、まるで自分自身が巨大なタワーを登っていくかのような強い身体感覚を呼び起こします。画面の随所に散りばめられた細部へのこだわりは、一般的な絵本の情報量を遥かに凌駕しており、読むたびに新しい発見をもたらす構造になっています。
また、出版元の偕成社が施した造本設計も、人気の土台を強固に支えています。縦に開いた状態で子どもが膝の上に置いても崩れにくく、繰り返しめくっても傷みにくい頑丈な厚紙製本が採用されています。視覚的なワクワク感と手触りの良さが一体化している点こそ、デジタルネイティブ世代の子どもたちをも虜にし続ける最大の理由です。