夜中に叫び暴れる夜驚症の真相|夜泣きとの違いと絶対に起こせない理由

夜中に叫び暴れる夜驚症の真相|夜泣きとの違いと絶対に起こせない理由

夜中に叫び暴れる夜驚症の真相|夜泣きとの違いと絶対に起こせない理由の全体像を分かりやすくまとめてご紹介します。

激しいパニック発作を目撃した大人は、「何か恐ろしい夢を見ているのではないか」と考えがちです。しかし、睡眠科学の観点から見ると、夜驚症のメカニズムは悪夢とは根本から異なります。人間の睡眠は、脳を休める深い「ノンレム睡眠」と、体を休めて夢を見る「レム睡眠」を周期的に繰り返しています。夜驚症が発生するのは、入眠後およそ90分から180分の間に訪れる最も深いノンレム睡眠(ステージN3:徐波睡眠)の段階です。

このとき、脳内では極めて特異な解離現象が起きています。恐怖や本能的な情動を司る扁桃体や自律神経系、運動を司る脳幹の一部が突発的に覚醒する一方で、理性や意識、状況認識を司る大脳新皮質(前頭前野)は深い眠りに沈んだまま停止しています。つまり、「体と情動のエンジンだけが暴走し、意識のドライバーが不在」という状態に陥っているのです。これが夜驚症の原因となる中枢神経系の未成熟です。

親が最も混同しやすい「夜泣き」や「悪夢」との境界線は、意識の有無と睡眠ステージに存在します。乳幼児の夜泣きは、浅い眠りの中で空腹、オムツの不快感、親の不在に対する不安などを訴えるコミュニケーション行動であり、抱っこや授乳、優しい声かけによって徐々に鎮静化します。また、悪夢はレム睡眠時に生じるため、呼びかけると目を覚まし、翌朝に「怖い怪獣の夢を見た」と断片的な記憶を語ることが可能です。

対照的に、夜驚症の発作中に子どもの意識はありません。瞳孔を開いて泣き叫び、親を押しのけて部屋の隅へ逃げ惑うような動作を見せても、外界の刺激を一切認知していません。ここで多くの親が陥る最大の過ちが、「正気に戻そうとして激しく揺さぶる」「大声で名前を連呼する」「頬を叩く」といった無理な覚醒の試みです。

なぜ夜驚症を起こしてはいけないのか。その真相は、部分覚醒状態にある脳に強引な刺激を与えると、睡眠酩酊(すいみんめいてい)と呼ばれる極度の混乱状態を引き起こすためです。大脳皮質が立ち上がらないまま強制的に身体を拘束されたり刺激されたりすると、脳はそれを「生命への直接的な攻撃」と誤認し、交感神経の暴走をさらに加速させます。結果として発作が長期化し、激しく暴れて家具に激突したり、親の手を振りほどいて階段から転落したりといった二次被害の危険性が跳ね上がるのです。

渡辺 美咲
著者

渡辺 美咲

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。