ソーシャルメディアや患者コミュニティで頻繁に見かける「難病の受給者証が届いたのに、障害者手帳は断られた」という声。この混乱が生じる最大の要因は、指定難病と障害者手帳の違いが正しく理解されていない点にあります。結論から言えば、この2つは制定の目的も根拠となる法律も管轄部署も異なる「完全に別個の制度」です。
まず、指定難病の患者に交付される「指定難病医療受給者証」は、2014年に成立した難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)に基づいています。その目的は、治療法が確立していない希少疾病に対して、原因究明や研究開発を促進しつつ、長期にわたる過重な医療費負担を社会全体で軽減することです。つまり、判断基準は「指定された病名であること」と「学会や国が定めた重症度を満たしていること」にあります。
一方、障害者手帳(身体障害者手帳)の根拠法は、1949年に制定された身体障害者福祉法です。こちらの目的は、身体の機能に一定以上の「永続的な機能障害」を抱える人に対して自立と社会参加を支援することであり、審査されるのは「病名」ではなく「失われた身体機能の度合い(状態)」です。
たとえば、潰瘍性大腸炎やクローン病と診断され、難病法と重症度分類基準を満たせば指定難病医療受給者証は交付されます。しかし、人工肛門(ストーマ)を造設していなかったり、一定以上の腸管切除・狭窄による重度の栄養障害が永続していなかったりする場合、身体障害者福祉法における「内部障害(小腸機能障害)」の認定基準には届きません。病気で苦しんでいても「機能障害が手帳基準に達していない」と判断されれば手帳は取得できないのです。