『とんぼ』の現場は、長渕剛の強烈なリーダーシップと妥協なき演技指導によって、常に異様な緊張感に包まれていたと伝えられています。主要キャスト陣の当時の役割と、その後の歩みは以下の通りです。
- 小川英二役(長渕剛):主演として圧倒的な存在感を発揮。セリフの間合いから衣装選びに至るまで徹底的にこだわり、独自のカリスマ像を完成させました。
- 水戸常吉(ツネ)役(哀川翔):英二を盲従する舎弟役を熱演。本作での体当たりの演技が出世作となり、後の「Vシネマの帝王」への足がかりを築きました。哀川本人は後年のインタビューで「長渕さんとの現場は毎日が真剣勝負だった」と振り返っています。
- 小川あずさ役(仙道敦子):英二の最愛の妹であり、暴力の世界から兄を救い出そうともがくヒロイン。確かな演技力で作品に情感と深みを与えました。
- 八重樫役(植木等):組の長老として重厚な存在感を示し、英二の数少ない理解者としてドラマに圧倒的な説得力を付与しました。
新宿歌舞伎町や有明の空き地など、実際のストリートで行われたゲリラ的なロケーション撮影は、当時の制作現場ならではの熱量と生々しさをフィルムに焼き付けています。