『鬼滅の刃』が多くの読者を惹きつける最大の理由は、悪鬼羅刹となった者たちにも「かつて守りたかった人間としての日常」が存在した点にあります。
【第1位】猗窩座(人間時代:狛治)――守るべき人をすべて奪われた男の絶望
病弱な父のために盗みを重ねていた狛治。父が自責の念から自死した後、彼を救ったのは道場主の慶蔵と、その娘・恋雪でした。狛治は恋雪と祝言をあげる約束をし、真っ当に生きることを誓います。しかし、隣接する剣術道場の卑劣な罠により、井戸に毒を投げ込まれ慶蔵と恋雪は非業の死を遂げます。絶望のあまり素手で67人の門下生を虐殺した現場に無惨が現れ、記憶を奪われたまま鬼へと変えられました。炭治郎との死闘の最中、恋雪の魂に抱きしめられて人間としての心を取り戻し、自らを滅する最期は涙なしには見られません。
【第2位】妓夫太郎と堕姫(梅)――最底辺の遊郭で寄り添い合った兄妹
遊郭の最下層「羅生門河岸」に生まれ、醜い容姿から実の母にすら疎まれた妓夫太郎。唯一の誇りだった美しい妹・梅が侍の目を突いた報復として生きたまま焼き殺され、雪の中で瀕死の妹を抱えて泣き叫んでいたところに現れたのが童磨でした。「俺から取り立てるな、何も与えなかったくせに」という妓夫太郎の怨嗟は、理不尽な格差社会に対する魂の叫びでした。
【第3位】黒死牟(人間時代:継国巌勝)――天才の弟への嫉妬に狂った武士の末路
始まりの呼吸の使い手・継国縁壱の双子の兄として生まれた巌勝。どれほど血の滲む修練を積んでも、生まれながらに神の寵愛を受けた弟の天賦の才に追いつけない絶望を抱えていました。痣の寿命(25歳)を超えて生き残り、弟を超える剣技を極めるために鬼化を選択。しかし最期まで縁壱を超えることはできず、着物の懐には幼少期に自らが弟に与えた手作りの笛が遺されていました。
【童磨と胡蝶しのぶの因縁】
一方で、読者から一切の同情を寄せられなかったのが童磨です。生まれつき感情が欠落していた彼は、救済と称して信者の女性たちを喰らい続けました。しのぶの姉・胡蝶カナエを殺害し、無限城ではしのぶをも体内に取り込みますが、それこそがしのぶの仕掛けた「全身に巡らせた藤の花の毒(致死量の700倍)」による相打ちの罠でした。栗花落カナヲと嘴平伊之助によって首を討ち取られ、地獄でしのぶに求愛するも冷酷に罵倒されて消滅しました。