初演以来、劇団四季カモメに飛ぶことを教えた猫キャスト陣の卓越した演技力と身体性は、演劇ファンの間で今なお語り草となっています。猫のしなやかな身のこなしと、港の荒くれ者としての男気、そして不器用な父性を同時に表現しなければならない難役がカモメに飛ぶことを教えた猫ゾルバ役歴代の俳優たちです。
初演のオリジナルキャストとして強烈な印象を残したのが笠松哲朗です。抜群の身体能力と澄んだ歌声、そして何よりもフォルトゥナータを見つめる切なく温かい眼差しは、観客の感情移入を一身に集めました。また、圧倒的な歌唱力と骨太な存在感で劇場の空気を支配した金本泰潤、劇団屈指のダンススキルと洒脱な演技で大人の哀愁を漂わせた萩原隆匡など、実力派トップ俳優たちが競うようにゾルバの魂を舞台上に立ち上げました。
一方、無垢で傷つきやすい雛から自立する一羽のカモメへと脱皮していくカモメに飛ぶことを教えた猫フォルトゥナータ役には、前田更紗や志賀ひかるらがキャスティングされました。鳥特有のぎこちない羽ばたきや、猫として振る舞おうとする無邪気さ、そしてクライマックスで飛翔を決意した瞬間の凛とした表情の変化は、まさに劇団四季の俳優教育の真骨頂です。母親代わりとして不器用に向き合うゾルバと、全幅の信頼を寄せるフォルトゥナータの呼吸は、血縁を超えた「魂の家族」の姿を鮮烈に具現化しました。