「面接担当者から開口一番『うちはキャバクラじゃないからね』と苦笑いされた」――歌舞伎町から西麻布の会員制ラウンジへの移籍を試みた20代前半の女性は、取材に対して苦い表情で当時の手記を明かしました。この告白に象徴されるように、両者のドレスコードの間には、言葉以上に深い心理的・美学的な断絶が存在します。
キャバクラにおける衣装の役割は、日常を忘れさせるゴージャスな非日常の演出です。光沢感の強いサテン生地、背中が大きく開いたカッティング、胸元にちりばめられた大粒のビジューといった要素は、薄暗いフロアでスポットライトを浴びてこそ映える「プロ仕様の制服」といえます。これに対して会員制ラウンジ服装規定が前提としているのは、あくまで「知的な男性の隣にいても恥ずかしくない、育ちの良さを感じさせるよそ行き服」です。
六本木で複数のラウンジを手がける採用総括マネージャーは、次のように内情を語っています。「面接で落とされる女性の約64%が、業態のコンセプトを誤解した衣装を選んでいます。ラウンジに来る富裕層の男性が求めているのは、キャバ嬢の営業感ではなく『普段は女子大に通っている清楚な子』や『昼は丸の内で働いているOL』とプライベートで飲んでいるかのような擬似体験です。ギラギラしたドレスを着てきた時点で、その演出意図をぶち壊してしまうのです」。
つまり、ラウンジドレスとキャバドレスの違いとは、単なる布地のデザイン差ではなく、「夜職のプロを演じるための記号」か「日常の延長線上にある洗練された女性像を演じるための記号」かという、演出戦略の根本的な違いに他なりません。