箱根寄木細工の代名詞ともいえる存在が「秘密箱(からくり箱)」です。一見するとどこにも継ぎ目や開口部が見当たらない木箱ですが、特定の外板を決められた順序でスライドさせることで、初めてフタが開く仕掛けになっています。
この秘密箱が開く仕組みは、箱の側面パネル内部に仕込まれた「段違いの溝」と「可動ピース(閂・サン)」の相互連動によるものです。一見すると平らな寄木パネルの一部が、指先のわずかな力でミリ単位でスライドします。1箇所を動かすと内部のストッパーが外れ、次のパネルが動くスペースが生まれる——この物理的連鎖が精密に設計されています。
解錠に必要な手数は製品によって大きく異なり、入門用の「4回」「7回」から、本格的な「14回」「21回」、さらには熟練コレクター向けの「54回」「72回」を超える超高難度のものまで存在します。季節による木材の微小な伸縮(湿度による膨張や乾燥による収縮)までも予測し、木目を読んでコンマ数ミリのクリアランスを削り出す職人技がなければ、スムーズに動く秘密箱は完成しません。