急性毒性による死亡リスクがゼロであるからといって、無制限に食べてよいわけではありません。連日のように極端な量を食べ続けた場合、体内の恒常性が崩れ、深刻な健康被害が生じることは確実です。過剰摂取によって現れる代表的な身体の不調を整理します。
第1のリスクは納豆セレン中毒です。急性致死量には遠く及ばないものの、長期間にわたって過剰摂取を継続した場合、慢性中毒の危険性が浮上します。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」において、成人のセレンの耐容上限量は1日あたり400〜450μg(女性は350μg)に設定されています。毎日30〜40パック以上を継続して食べるような極端な偏食に陥ると、毛髪の脱落、爪の変形や剥離、重度の胃腸障害、抹消神経の障害といった中毒症状に苛まれる恐れがあります。
第2に懸念されるのが大豆イソフラボン過剰摂取です。納豆1パックには、アグリコン換算で約30〜35mgの大豆イソフラボンが含まれています。食品安全委員会が定める大豆イソフラボンの安全な1日摂取目安上限値は70〜75mg(特定保健用食品等からの上乗せ上限は30mg)です。日常的に1日3パック以上を食べ続けると容易にこの上限を超過し、エストロゲン様作用によってホルモンバランスが乱れ、月経周期の異常や子宮内膜増殖症のリスク上昇につながる懸念が指摘されています。
第3に、納豆プリン体と痛風の関係です。納豆は健康食の代表格ですが、実は1パックあたり約55mg前後のプリン体を含んでいます。痛風予防のためのガイドラインでは、1日のプリン体摂取量を400mg以下に抑過することが推奨されています。肉や魚を普通に食べた上で納豆を何パックも重ねて食べれば、尿酸値の急激な上昇を招き、耐えがたい激痛を伴う痛風発作の引き金を引きかねません。
第4のリスクは納豆食べ過ぎ下痢腹痛という消化器系のトラブルです。納豆には豊富な不溶性食物繊維と、強い生命力を持つ納豆菌が含まれています。適量であれば腸内環境を整える善玉菌として働きますが、短時間で大量に胃腸へ送り込むと腸内細菌叢のバランスが一時的に乱れ、異常発酵による腹部膨満感、腹鳴、激しい腹痛や下痢を引き起こします。
第5のリスクとして、タレやカラシに含まれる塩分の累積も見逃せません。付属のタレ1袋には約0.6〜0.8gの食塩相当量が含まれており、納豆を大量消費することはそのまま塩分過多につながり、高血圧や動脈硬化を静かに進行させる要因となります。