消滅のカウントダウンが始まっていたドムドムバーガーを劇的なV字回復へと導いた立役者が、2018年に代表取締役社長へ就任した藤﨑忍氏です。藤﨑社長のキャリアは外食産業のエリートコースとは対照的でした。長年専業主婦を務めた後、39歳でSHIBUYA109のカリスマショップ「CECIL McBEE」の店長として頭角を現し、その後居酒屋経営などを経てドムドムに招聘されたという異色の経歴を持っています。
当時の特番インタビューや自著・手記で語られた「現場のスタッフが誇りを持てるブランドにしたい」「競合と同じ土俵で戦っても絶対に勝てない」という生の告白通り、藤﨑氏が打ち出した戦略は常識破りの連続でした。
マクドナルドの逆を行く「尖った商品開発」
メガチェーンが「万人に受ける味」と「低価格の効率化」を徹底する中、ドムドムが選んだのは「誰かに強烈に刺さる体験」でした。その象徴となったのが、2019年に発売され社会現象となった「丸ごと!!カニバーガー」です。高級食材のソフトシェルクラブを丸ごと揚げてバンズに挟むという前代未聞のバーガーは、1,000円前後の強気な価格設定にもかかわらず即完売が続出しました。
さらに「手作り厚焼き玉子バーガー」や「丸ごと!!カレイバーガー」など、他社が決して真似できないエッジの効いた限定メニューを次々と投下。SNS時代において「見た瞬間に人に言いたくなる驚き」を武器にし、広告宣伝費をかけずに爆発的な話題を獲得していったのです。
「ドムぞうくん」のアイコン化とアパレル戦略
再生のもう一つの柱が、マスコットキャラクター「どむぞうくん」を活用したブランディングです。従来はファストフードの看板に過ぎなかったキャラクターを前面に押し出し、ぬいぐるみ、アパレル、文具、ガチャガチャといったグッズ展開を本格化。ビームス(BEAMS)をはじめとする人気セレクトショップとのコラボレーションは若年層の間で爆発的な支持を集めました。
「ハンバーガーを食べるため」だけではなく「ドムドムというブランドの世界観を身にまとう」という新たな文脈を生み出したことで、飲食店の枠を超えたロイヤルティビジネスが成立。この複眼的な収益構造が、限られた店舗数でありながら過去最高の純利益を叩き出す原動力となりました。