本作の成立過程を紐解く上で欠かせないのが、「WANDS 天使になんてなれなかった 制作秘話」におけるコンポーザーとプレイヤーの邂逅です。本作の作曲を手がけたのは、WANDSの初代キーボーディストであり、バンドの結成者でもあった大島康佑(後にSO-FIを結成)。アルバム『時の扉』のリリース(1993年4月17日)時点で大島は既にバンドを離れていましたが、表題曲「時の扉」とともに、この哀愁を帯びたマイナーコード進行の傑作を遺していました。
大島が構築した憂いを帯びたメロディラインを、より先鋭的なロックアンセムへと昇華させた立役者が、ギタリスト・柴崎浩です。イントロから咽び泣くようなチョーキングと、サビ裏で繊細に絡みつくアルペジオ、そして感情の起伏を克明にトレースするギターソロは、当時のJ-POPシーンでも群を抜く完成度を誇っていました。明石昌夫による重厚なアレンジとデジタルシーケンス、柴崎の有機的なハードロックギターが共鳴し、デジタルとアナログが高次元で調和した90年代ビーイング・サウンドの最高峰が完成したのです。