広島の風景が世界へ鮮烈な印象を与えた契機として、濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』を忘れることはできない。赤いサーブが市内を静かに滑走するシーンは、都市の機能美と詩的な静寂を見事に切り取っていた。スクリーンの舞台となったスポットには、今なお世界中からシネフィルたちが足を運ぶ。
世界遺産の原爆ドームや広大な広島平和記念公園は、単なる歴史のモニュメントではない。祈りの場でありながら、市民が日常的に憩い、思索を深める生きたパブリックスペースとして機能している。水辺の遊歩道カフェやアートイベントが融合し、重厚な歴史性とモダンな都市生活が見事な調和を見せている点こそ、中区が世界中を魅了してやまない真の理由だろう。