SNSやネット掲示板を調査すると、「レーダーには雨雲が映っていないのに、外に出たら霧雨で服がびしょ濡れになった」「画面上は真っ赤な大雨表示なのに、地上には一滴も落ちてこない」といったユーザーの戸惑いの声が数多く投稿されています。現代の高度な気象観測網において、なぜこのような感覚のズレが生じるのでしょうか。
実際の気象観測現場を取材すると、レーダー特有の「物理的死角」という構造的な課題が浮かび上がってきます。気象レーダーは電波を斜め上空に向けて発射し、雨粒に反射して戻ってきた信号を解析しています。そのため、地上から高度1,000メートル以下の低い空に発生する層雲や霧雨性の雨雲は、電波線の下をすり抜けてしまい、レーダーに感知されないケースがあるのです。冬場の日本海側で発生しやすい地表近くの冷たいしぐれ雨や、山沿いの湿った空気による濃霧性の小雨がこれに該当します。
逆に「レーダーは真っ赤なのに雨が降らない」現象は、上空で激しい雨が生成されているものの、地表付近の空気が極端に乾燥しているために、落下する途中で雨粒が蒸発してしまう「蒸発現象(雨滴蒸発)」が主な原因です。また、レーダー画像の更新周期である「5分」の間に雲が急速に湧き上がったり消散したりする過渡期にも、画面と地上の体感にタイムラグが生じます。「画面を100%過信せず、空の暗さや湿った風の匂いといった五感を併用する」という現場感覚を持つことが、結果として最も無駄な濡れを防ぐ知恵となります。