ビジネスパーソンが最も警戒すべきは、目上の方や取引先の相手に対して「馬齢を重ねる」を使ってしまう誤用です。この誤りがなぜ致命的な人間関係の破綻を招くのか、その理由は言葉の構造そのものにあります。
前述の通り、「馬齢を重ねる」には「無駄に年をとった」「何の成果も上げていない」という意味が構造的に組み込まれています。そのため、仮に敬語のつもりで「〇〇部長も馬齢を重ねられ、ますますご活躍のことと存じます」などと発言した場合、文脈上は以下のような暴言へと変換されてしまいます。
「〇〇部長も、大した功績も残さずに無駄に歳ばかり食われ、ますますご活躍のことと存じます」
相手を称えるどころか、公の面前で真正面から侮辱していることになり、相手のプライドを著しく傷つけます。文化庁の言葉に関する調査や各種マナー研修の現場でも、慣用句の意味を取り違えて「相手を褒める言葉」と誤認しているケースが約2〜3割程度散見されると報告されており、悪気がないだけに事態は深刻です。