上念司氏の言論活動を語る上で避けて通れないのが、長年レギュラーを務めた『真相深入り!虎ノ門ニュース』からの降板劇です。2021年初頭に表面化したこの降板騒動の根底には、2020年米大統領選挙の報道姿勢を巡る決定的な思想的・手法的な対立が存在していました。
当時、米大統領選における不正疑惑を巡り、ネット保守層の間では大規模な陰謀論的言説が急速に拡散していました。これに対し、上念氏は公的証拠や司法判断を重視し、「ファクトに基づかない主張には同調できない」と慎重姿勢を徹底。これが、疑惑を強く主張していた百田尚樹氏や有本香氏ら他の出演陣との間で激しい摩擦を生むことになりました。当時の自身の配信や発信においても、上念氏は「陰謀論と保守思想は明確に分けるべきだ」と強い語調で主張し、妥協を拒む姿勢を鮮明にしていました。
番組チャット欄やSNSでは連日激しい誹謗中傷や抗議が吹き荒れ、制作サイドは事態の沈静化を図る形で上念氏の出演見合わせ・実質的な降板を発表しました。百田氏とのSNS上での舌戦や絶縁宣言は、単なる個人間の感情的な衝突にとどまらず、エビデンスを重んじる現実主義と、信条や情動を優先するナラティブとの間で生じた、ネット言論界の構造的分断を浮き彫りにした象徴的な出来事でした。