日本文化において、三毛猫は古来より金運や商売繁盛、航海安全をもたらす福猫として尊ばれてきました。その最大の要因は、やはり「オスの極端な希少性」にあります。滅多にお目にかかれない存在に出会えること自体が、強運の引き寄せと見なされたのです。
江戸時代から近代にかけて、船乗りたちの間では「三毛猫のオスを船に乗せると海難事故に遭わない」「天候の急変を予知してくれる」という信仰が広まり、守り神として重宝されました。1956年の第1次南極地域観測隊において、過酷な極地遠征の隊員たちを精神的に支えた越冬隊の猫「タケシ」が三毛猫のオスであったことは、歴史的にも有名な逸話です。
また、日本全国の寺社や商店で見かける縁起物「招き猫」の原型も、白地に黒と茶の斑点を持つ三毛猫がモデルとされています。右手を挙げていれば金運を招き、左手を挙げていれば人脈や客を招くとされる伝統工芸の意匠には、古くから日本人が三毛猫に託してきた幸福への祈りが色濃く宿っています。