世界を震撼させた2022年フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ海底火山噴火は、従来の津波防災の常識を根底から打ち砕いた。噴煙が成層圏を越えて中間層にまで達した大爆発は、超高速の大気振動である「ラム波」を発生させ、それが海面と強力に結合することで世界中の沿岸に予期せぬ潮位変化をもたらした。
日本各地の港を襲ったこの「空振津波」は、海底の地滑りや断層運動による通常の津波計算モデルでは予測不可能な速度で到達した。気象庁をはじめとする世界の気象機関は、大気波と海洋波の相互作用をリアルタイムでアルゴリズムに組み込む新たな警戒体制の構築を余儀なくされたのである。
南太平洋の孤立した小島で起きた一つの噴火が、数千キロ離れた日本列島の港湾機能を麻痺させ、物流をストップさせた事実は重い。海底で起きる巨大現象が持つ「地球規模の即時波及性」を、私たちはこの大噴火によって否応なしに突きつけられたのだ。