男山の頂に足を踏み入れると、鮮烈な朱塗りの南総門が参拝客を迎え入れる。その奥に構える本殿は、2016年に国宝へ指定された日本屈指の神社建築だ。
「八幡造(はちまんづくり)」と呼ばれる独特の構造を持ち、前殿と後殿が前後につながる形式をとる。黒漆塗りの壁面に黄金の装飾金具、そして極彩色の彫刻群。その美しさは単なる装飾にとどまらず、江戸初期の高度な大工技術と美意識の到達点を示している。
見逃せないのが社殿の随所に刻まれた意匠だ。織田信長が寄進したとされる「信長塀」の重厚な土塀や、蟇股(かえるまた)に彫られた「向かい鳩」。左右の鳩が少し顔を背け合っている珍しい構図には、平和への祈りと神話的エピソードが込められており、訪れる者の好奇心をくすぐり続けている。