惨劇から歳月を経て、川崎市および周辺地域ではかつてない規模の治水対策が進められてきました。川崎市建設緑政局が策定した「多摩川周辺防災対策緊急計画」に基づき、2026年現在、ハード・ソフト両面における多重防護体制が構築されています。
最大の焦点だった排水樋管の逆流対策については、市内各所の樋管(山王排水樋管や宮内排水樋管など)において逆流防止ゲートの電動化・自動化・遠隔操作システムの整備が完了しました。従来は現地の水位や職員の目視に頼って手動閉鎖を行っていたため、急激な増水時に閉鎖タイミングが遅れるリスクを抱えていましたが、現在はセンサー連動と中央監視による迅速なゲート閉鎖が可能です。
さらに、ゲートを閉鎖した後に街側の雨水が溜まって溢れるのを防ぐため、大型排水ポンプ車の配備増強や固定式ポンプ設備の増設が進められました。これにより、多摩川からの逆流を遮断しつつ、内水氾濫を引き起こす雨水を多摩川へ強制排水する処理能力が大幅に引き上げられています。
行政の動きと足並みを揃え、民間側である各タワーマンションの管理組合も巨額の修繕積立金を投じて防護壁を固めました。浸水口となる地下開口部への二重の止水板・水密扉(防水ドア)の設置、非常用発電機の燃料タンク防護、さらには被害の大きかった物件における電気設備の地上2階以上への移設や防水区画化など、2019年当時とは比較にならない強固な物理バリアが張り巡らされています。