黒電話を扱う上で、現代のスマートフォンやプッシュホンと根本的に異なるのが「発信手順の順序」と「ダイヤルの物理的な操作感」です。手順を一つでも誤ると発信信号が正常に交換局へ届かないため、まずは基本の作法を整理します。
電話をかける際の大原則は、「必ず受話器を先に持ち上げる」ことです。受話器をフックスイッチから持ち上げると受話口から「ツーー」という発信音(ダイヤルトーン)が聞こえます。この音が鳴っている状態が、回線が繋がり発信準備が整った合図です。受話器を置いたままダイヤルを回しても一切発信されません。
続いて重要なのが黒電話のダイヤルの回し方です。目的の数字の穴に人差し指を奥までしっかりと入れ、時計回りに円弧を描くように回転させます。右下にある金属製の「指止め(ストッパー)」に指が触れるまで確実に回しきったら、指をスッと引き抜いてダイヤルが自力で元の位置へ戻るのを待ちます。このとき、早くかけようとして手で無理に戻したり、戻る途中で次の番号に触れたりしてはいけません。黒電話は「バネ仕掛けで元の位置へ戻る時間」を使って電気信号を生成しているためです。
電話番号が「03-1234-XXXX」であれば、0を回して戻るのを待ち、次に3を回して戻るのを待つ、という動作を1桁ずつ愚直に繰り返します。最後の番号が戻りきると、相手先を呼び出す「プルルル」という呼出音(リングトーン)に切り替わります。
電話を受ける際の手順は極めて直感的です。重厚なベルが「ジリリリリン!」と鳴動したら、受話器を持ち上げるだけで通話が開始されます。通話を終了するときは、受話器を本体のフックスイッチ(2つの白い突起)の上に静かに戻します。中途半端に浮いていると「話中」状態が続いて着信できなくなるため、確実にカチリと音がするまで置くのが鉄則です。