歩行や回旋動作のたびに関節が鳴る現象の多くは、腱や靭帯が骨の突起部を乗り越える際に発生する摩擦音、あるいは関節包内の圧力が急激に変化して生じる微小なキャビテーション(気泡の破裂現象)に起因する。特に股関節の前面を走る深層筋肉である腸腰筋の柔軟性が失われると、骨盤前面の骨隆起と腱が激しく擦れ合い、特徴的なスナップ音を放つ。
問題は、この段階では神経を刺激するほどの強い炎症が起きておらず、「痛くないから平気」と錯覚しやすい点にある。擦れ合う腱や関節唇には反復的な微小外傷が蓄積しており、滑液包の肥厚や筋膜の硬化をじわじわと進行させていく。