スマートフォンの画面をスクロールして食べログの高得点店を探す作業は、現代の食べ歩きにおいて日常となった。だが、デジタルな数字の網の目からこぼれ落ちる傑作も少なくない。ミシュランガイドのビブグルマンに突如として選出されるような実力派には、宣伝を一切行わず、常連客の口コミだけでカウンターが埋まる隠れ家が多い。
席数わずか数席の小さなトラットリア。シェフが一人で鍋を振り、客の食べるスピードに合わせて次のパスタを茹で始める。アルゴリズムでは数値化できない「作り手と食べ手の呼吸の同期」こそが、真の美食体験を生み出すのだ。