店頭のりんごを触った際、表面がしっとりとベタつくような感触に驚き、「輸入果物のように人工的なワックスや防腐剤が塗られているのではないか」と不安を抱く消費者は少なくありません。しかし、これは完全な誤解です。
このベタつきの現象は、果樹園芸学において「油上がり(あぶらあがり)」と呼ばれます。りんごが熟度を増す過程で、果実自らが内部のリノール酸やオレイン酸といった不飽和脂肪酸を分泌し、皮に含まれるロウ物質(ワックス成分)を溶かして表面に膜を張る生理現象です。
油上がりには、果実内の水分の蒸発を防ぎ、乾燥や病原菌の侵入から実を守るという重要な天然のバリア機能があります。つまり、表面がベタベタしているのは「樹上で完熟を迎え、栄養が満ちた証拠」であり、人工物ではなく天然由来の成分であるため、水洗いして皮ごと食べても健康上の問題は全くありません。「ジョナゴールド」や「つがる」「千秋」などの品種は特に油上がりが起きやすい性質を持っています。