この表現を英語の原典から検証すると、極めて皮肉な歴史的事実が浮かび上がってきます。英語圏の映画や文学において、先住民族が語るフレーズとして知られていたのは「Indian does not lie(インディアンは嘘をつかない)」以上に、「White man speaks with forked tongue(白人は二枚舌を使う)」という強烈な告発でした。
18世紀から19世紀にかけて、アメリカ合衆国政府や入植者はネイティブアメリカンの各部族と数百回に及ぶ土地や平和に関する条約を締結しました。しかし、金鉱の発見や領土拡大の野望によって、その条約のほとんどは一方的に破棄・蹂躙された歴史があります。先住民族の間では「言葉を一度交わしたら命をかけて守るのが誇り高き戦士の掟であり、平気で嘘をつくのは白人の方だ」という強い道徳観と怒りがありました。
しかし、ハリウッドの初期西部劇がこの構図をエンターテインメントとして消費する過程で、「白人の欺瞞を告発する言葉」は切り落とされ、「片言で愚直さをアピールする従順なインディアン」というステレオタイプへと矮小化されてしまったのです。