手足口病の主な原因ウイルスは、エンテロウイルス71型(EV71)やコクサッキーウイルスA16型(CA16)、コクサッキーウイルスA6型(CA6)など複数存在します。このうち、特にEV71型は中枢神経系合併症(無菌性髄膜炎、急性脳炎、急性弛緩性麻痺など)を引き起こしやすい性質を持ち、国内外の流行期に死亡例や後遺症例が報告されているため軽視できません。
小児科の臨床現場において、医師が最も神経を尖らせるのが以下の2大リスクです。
1. 痛覚過敏が生み出す「急速な脱水症状」
口内炎(アフタ)が舌や頬の内側、喉の奥に多発すると、強い痛みから唾液を飲み込むことすら嫌がり、よだれが異常に増えます。子どもが水分を完全に拒絶し、「おしっこが6〜8時間以上出ない」「唇や舌が乾いてカサカサしている」「泣いているのに涙が出ない」「皮膚にハリがない」状態に陥っている場合、脱水が急激に進行している証拠です。この状態を自宅放置すると循環動態が崩れ、点滴による急速補液が必要になります。
2. 脳炎・髄膜炎を疑うべき「神経症状の初期兆候」
ウイルスの脳神経への波及は、発熱後数日以内に現れる傾向があります。典型的な兆候は以下の通りです。
- 頻回の嘔吐:胃腸炎のような下痢を伴わず、激しい吐き気や噴水状の嘔吐を繰り返す。
- ミオクローヌス(ピクつき):寝入りばなや安静時に、手足がビクッと跳ね上がるような動きを頻繁に繰り返す。
- 意識の変容:名前を呼んでもボーッとしている、視線が泳いで合わない、異常に眠がり起こしても起きない。
こうした症状がひとつでも確認された場合、翌朝まで様子を見るのは禁忌です。ためらわずに夜間救急外来へ向かうか、救急車の出動を要請してください。