現在では全国区の調味料となった柚子胡椒ですが、その発祥の地を巡っては大分県と福岡県の双方に有力な説が存在します。
最も有力な発祥地の一つが大分県日田市(旧津江村地域)です。山深いこの地で、自生していた柚子の皮と自家栽培の唐辛子を塩とともにすり鉢ですり潰し、保存食や薬味として各家庭で作られていたのが始まりとされています。昭和30年代に入ると、地元の温泉街や観光地の土産品として商品化され、九州全域へ広まりました。
一方で、福岡県と大分県の県境に位置する霊山・英彦山(ひこさん)に伝わる山伏(修験者)の保存食がルーツであるという説も広く知られています。修験者たちが厳しい修行中の滋養強壮や防寒のために唐辛子と柚子を練り合わせたものが、麓の集落へと伝わったという伝承です。
いずれの説にせよ、九州北部の豊かな山林資源と、唐辛子を日常的に栽培・消費してきた食文化の融合によって誕生したことは間違いありません。