二人の出会いは、1956年に公開された東映映画『恐怖の空中魔幻』の撮影現場でした。当時、江利チエミさんは14歳で米軍キャンプで歌い始め「テネシー・ワルツ」の大ヒットで美空ひばりさん、雪村いづみさんと共に「三人娘」として国民的人気を博していた大スターでした。一方の高倉健さんは、同年に映画『電光空手打ち』で主役デビューを果たしたばかりの無名に近い新人俳優でした。
現場でチエミさんの明るさとプロフェッショナルな姿勢に心を奪われた高倉さんは、周囲が驚くほどの一途なアプローチを開始します。撮影の合間に温かいコーヒーを差し入れ、彼女の移動時には愛車で送り迎えを買って出るなど、不器用ながらも誠実な態度で接し続けました。その後、チエミさんの代表作である映画『サザエさん』シリーズなどでの共演を重ねる中で二人の距離は急速に縮まっていきます。
チエミさんの自著や当時の関係者の証言によると、高倉さんは撮影現場で常に彼女を気遣い、スター特有の孤独を抱えていたチエミさんにとって最も安心できる精神的支柱となっていきました。周囲の反対や格差婚と揶揄する声を跳ね返し、二人は交際を深めていきました。