鬼才・山本直樹の現在と歴代傑作|森山塔の真相からレッドまで徹底検証

鬼才・山本直樹の現在と歴代傑作|森山塔の真相からレッドまで徹底検証

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数多くの傑作を世に送り出してきた山本直樹ですが、その中でもキャリアの頂点として語り継がれる珠玉の作品群が存在します。いずれも人間の極限状態と集団心理のグロテスクさを容赦なく抉り出した名作ばかりです。

ライフワークにして金字塔『レッド 1969-1972』

山本直樹の最高傑作として国内外で圧倒的な評価を受けるのが、連合赤軍事件とその前史を克明に描いた『レッド 1969-1972』(本編全8巻、続編・最終章を含め全13巻)です。本作は第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。

最大の特徴は、実在の人物を仮名にしつつも、史実の時系列を恐ろしいまでの精度で再現した点にあります。何より読者を戦慄させたのは、作中に登場する若者たちの頭上に「〇〇(死亡理由)まで あと〇〇日」という無機質な死亡宣告カウントダウンが刻まれる演出でした。劇的な煽りを一切排し、冬の山岳ベースで仲間同士が「総括」と称してリンチ死へと突き進む密室の狂気を、冷え切った空気感そのままに描き出しています。

孤島で繰り広げられる信仰の崩壊劇『ビリーバーズ』

1999年から2000年にかけて連載された『ビリーバーズ』は、カルト宗教団体に所属する男女3人が無人島で繰り広げる共同生活を描いた心理サスペンスです。本名を捨て「オペレーター」「議長」「副議長」と呼び合う彼らが、性欲や飢えといった動物的本能によって徐々に教義の呪縛から解き放たれ、同時に崩壊していく様を生々しく活写しました。2022年には城定秀夫監督、磯村勇斗主演によって実写映画化され、現代の閉塞感とも共鳴するタイムリーな傑作として再び脚光を浴びました。

家族という共同体の解体ホラー『ありがとう』

1990年代に発表された『ありがとう』は、多くの読者にトラウマを植え付けた怪作です。ある平凡な一家が、父親の失踪、新興宗教への傾倒、近隣住民とのトラブル、家庭内暴力などを引き金に、加速度的に破滅へと転がり落ちていく姿を描きました。「日常の足元がいかに脆い氷の上に成り立っているか」をこれでもかと見せつける展開は、今なお心理ホラーの金字塔として語られています。

純愛と倒錯の結晶『夕方のおともだち』

SMを媒介にして結びつく男女の切なくも奇妙な関係性を描いた『夕方のおともだち』も外せません。過激なプレイを描きながらも、漂う空気はどこまでも寂寥感に満ちており、人間同士が真に触れ合うことの難しさと尊さを提示しました。こちらも2022年に廣木隆一監督、村上淳主演で映画化され、文芸性の高いドラマとして絶賛を集めました。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。