水道水の水温をめぐっては、日常の思い込みやインターネット上の誤情報によって、時に健康や生命に関わるトラブルが生じています。代表的な3つの盲点を整理します。
「常温」の誤解と飲用水としての管理
健康や美容のために「常温の水を飲む」という習慣が定着していますが、日本薬局方における「常温」の規定は15℃〜25℃と定められています。真夏に蛇口から出る28℃〜32℃の水や、冬場の一桁台の水は、厳密には「常温の水」の範疇を大きく逸脱しています。特に夏場のぬるい水道水は雑菌が繁殖しやすいうえ、残留塩素の分解が早まるため、汲み置きの放置は衛生上の重大なリスクを伴います。
赤ちゃんのミルク調乳における致命的な勘違い
赤ちゃんのミルクを作るときに水道水の温度をどう扱うかは、極めて繊細な判断が求められます。世界保健機関(WHO)および厚生労働省のガイドラインでは、粉ミルクの調乳にはサカザキ菌やサルモネラ菌を殺菌するため「70℃以上のお湯」を使用することが鉄則です。「熱すぎるから」と、沸騰させていない生の水道水を注ぎ足して適温(人肌の約40℃)に冷ます行為は、微量な細菌感染のリスクを招くため絶対に避けなければなりません。冷ます際は、哺乳瓶のフタをした状態で流水や氷水に浸けて外側から冷却するのが正しい手順です。
アクアリウムで多発する「水合わせショック」
熱帯魚やメダカ、エビ類を飼育する水槽管理において、季節による水道水の水温差は命取りになります。水槽への水道水の温度合わせを怠り、25℃前後に保たれた飼育水の中に、冬場の8℃の水や夏場の30℃超の水を直接注ぎ込むと、魚は急激な水温変化に耐えきれず「水温ショック」を起こして衰弱したり、白点病を発症して全滅したりします。カルキ抜きを行うだけでなく、水温計を用いて飼育水と新水の温度差を1℃〜2℃以内に調整してから注ぎ入れる配慮が欠かせません。