博多の食通や地元住民に「長浜御殿の魅力とは何か」と尋ねれば、多くの人が「単なるラーメン屋ではなく、完成された大衆酒場であること」と即答します。1971年の創業以来、福岡市内に複数の系列店を展開する長浜御殿グループにあって、住吉店は都心部と住宅街の結節点という立地も相まって、独自の進化を遂げてきました。
店内に入るとまず目を奪われるのが、ガラス張りのネタケースにずらりと並ぶ焼き鳥の串と、湯気を上げる角型のおでん鍋です。ラーメン専門店でありながら、着席した客の8割以上がまず瓶ビールや焼酎を頼み、酢モツや豚足、焼き鳥をつまみながらグラスを傾けます。厨房の活気ある掛け声、常連客の笑い声、そして豚骨を煮出す羽釜の音が一体となった空間は、かつて博多の街角に無数に存在した屋台そのものの熱気です。
「観光地化された豚骨ラーメンではなく、博多っ子が普段着で通う本物の日常がここにある」と、福岡の飲食カルチャーに詳しい地元ライターは証言します。飲んで語らい、最後に出来立ての長浜ラーメンですする——この一連の体験をひとつの暖簾の下で完結できる懐の深さこそが、長浜御殿住吉店が半世紀にわたり愛好家を惹きつけて離さない本質です。