作中で最も神秘的かつ刹那的な輝きを放った人物が、「獏羅天(ばくらてん)」の幹部であり、愛機「悪魔の鉄槌(ルシファーズ・ハンマー)」を駆る天羽セロニアス時貞(あもう セロニアス ときさだ)です。
彼が語った「スピードの向こう側…」というフレーズは、バイク乗りの心理描写を超えて、若者が抱く救済への渇望を美しく言語化したものでした。天羽にとって走ることは、争いや暴力の手段ではなく、自らの魂を浄化し「音」を奏でる行為そのものでした。限界を超えた速度の先にある静寂を追い求めた彼の姿は、主人公・浅川拓にも決定的な影響を与えます。
物語後半で天羽が迎える衝撃的な結末と相まって、この言葉は作品全体の精神的クライマックスを形成しました。ネット上では何かを極限までやり込んだ状態を指して語られることが多いものの、原典における切なさと孤高の美学は、2026年の今もバイカーやカルチャー愛好家の心を捉えて離しません。