多くの地元民や観光客を虜にした最大の引力は、本土のファミリーレストランでは決して味わえないダイナミックなアメリカンチャンプルー文化そのものでした。ドアを開けると広がるボックスシート、少し擦り切れたビニールレザーの質感、ジュークボックスから流れるオールディーズの調べ。まさにコザのアメリカンダイナーを体現する非日常の空間でした。
看板メニューとして誰もが真っ先に名を挙げるのが、料理のスターターとして供された沖縄ドライブイン名物スープです。
このスープ、初見の旅行者は一様に「薄いカフェオレのような色」「豚骨ラーメンの残り汁かと思った」と驚きの声を漏らします。一般的なコーンポタージュやクラムチャウダーとは全く異なり、豚骨とチキンの出汁をベースに、小麦粉をバターやラードでじっくり炒めて溶きのばした、独特のトロみとミルキーさを持つスープです。
一口目は極めて素朴で、人によっては「味がぼやけている」と感じるほど控えめな塩気。しかし、卓上に置かれたS&Bのテーブルコショウをこれでもかと振りかけることで化学反応が起きます。動物性エキスのコクとピリッとした刺激、まろやかな小麦の風味が調和し、飲み進めるほどにスプーンが止まらなくなる中毒性を生み出していました。
スープに続いて登場する主役たちも規格外でした。サイコロ状にカットした牛肉をタマネギやピーマンと共に強火で炒め、ウスターソースやA1ソースベースの特製タレで絡めた「チャップステーキ」。平皿に山盛りにされたフライドライス(炒飯)、そしてエビフライ、ハンバーグ、トンカツが一皿に集結した夢のような「Aランチ・Bランチ」。戦後アメリカから持ち込まれた肉食文化を、沖縄の家庭的な胃袋のサイズに合わせて再構築したボリューム感こそが、深夜のコザで働く若者たちの胃袋を掴んで離さなかったのです。