精神科医・和田英樹氏の言葉がなぜこれほどまでに読者の心を揺さぶり、メガヒットを連発するのか。その最大の理由は、「健康診断の数値に怯える生活から高齢者を解放したこと」にあります。
高度経済成長期以降の日本医療は、主に40代〜60代の現役世代を対象とした「生活習慣病予防(メタボリックシンドローム対策)」を中心に組み立てられてきました。血圧、血糖値、コレステロール値を徹底的に下げることが正義とされ、厳しい食事制限や多剤処方が日常化していたのです。しかし、和田氏が長年現場で診察してきた70代・80代の高齢者においては、数値を厳格に管理しすぎた結果、低栄養や活動量の低下を招き、かえって認知症や寝たきりを早めてしまうケースが多発していました。
自著やインタビューの中で和田氏は、「高齢者に必要なのはメタボ対策ではなく、フレイル(衰弱)対策だ」と一貫して訴え続けています。大好物を我慢してストレスをためるより、肉を食べてセロトニン(幸福物質)を分泌させ、意欲的に外出するほうが脳にも体にもプラスに働くという主張は、厳格な健康管理に息苦しさを感じていた高齢者にとって、まさに「救いの福音」として届きました。