オキシマイザーを使うとなぜ少ない酸素消費で呼吸が楽になるのか。その背景には、呼吸生理学に基づいた巧妙な「酸素節約効果原理」が存在します。
人が1回に吸い込む空気(1回換気量:成人でおよそ500mL)のうち、実際に肺胞に届いて血液中に酸素を取り込むガス交換に使われるのは、吸い始めの約3分の2(約350mL)に過ぎません。吸気の後期に吸い込んだ残りの空気は、気管や気管支といったガス交換が行われない「解剖学的死腔(約150mL)」にとどまったまま、次の呼気でそのまま吐き出されてしまいます。
オキシマイザーのリザーバー内部には、患者の呼気圧によって閉じ、吸気時の陰圧によって瞬時に開く精密な膜が組み込まれています。吸気が始まったまさにその瞬間、リザーバー内に溜め込まれていた約20〜30mLの純度100%に近い高濃度酸素が、ボーラス(一塊)となって一気に肺胞めがけて吸い込まれます。ガス交換に最も寄与する「最初の吸気」を高濃度酸素で満たすため、吸入酸素濃度(FiO2)が劇的に跳ね上がるのです。
臨床データによると、オキシマイザーを使用した場合、通常の鼻カニューラと比較して約半分から4分の1の酸素流量で同等の動脈血酸素飽和度SpO2改善が得られることが実証されています。例えば、通常カニューラで毎分4Lを吸入しなければ労作時にSpO2が90%を下回ってしまう重症COPD患者であっても、オキシマイザーに切り替えることで毎分1L〜2Lの設定でSpO2を安定した水準に維持できるようになります。この酸素効率の飛躍的な向上が、運動時の過度な息切れを抑え、呼吸筋の疲弊を防ぐ決定打となります。