皮膚や粘膜に異常が生じた際、通常であれば免疫反応によって赤みや強い痛み、熱感が生じます。しかし、多くの人が経験するまぶたの白いできものに痛みがない理由は、急性細菌感染による化膿ではなく、代謝不全によって生じた「無菌性の閉塞・角質貯留」が原因だからです。神経を圧迫するほどの急速な容積拡大が起きないため、違和感や視覚的な引っかかりだけで痛覚が刺激されません。
一般に「まぶたにできた白い脂肪の塊」と俗称されますが、実際には脂肪ではなく、蓄積した物質や発生部位によって明確に疾患が分かれます。
第一の候補が稗粒腫(はいりゅうしゅ・ひりゅうしゅ)です。表皮のすぐ下にある毛包や汗管の出口付近に、皮膚の角質(ケラチンタンパク質)が袋状に蓄積してできる直径1〜2ミリ程度の良性腫瘍です。ターンオーバーの遅延や、クレンジング時の摩擦刺激、軽微な擦り傷が治る過程での表皮巻き込みなどが引き金となります。
第二の候補がマイボーム腺梗塞です。まつ毛の生え際の内側には、涙の蒸発を防ぐ油分を分泌する「マイボーム腺」が上下合わせて数十個並んでいます。この分泌口で油分の性状が変化して固まり、角質と混ざり合って白または黄色っぽいチョークのような点として突出する状態を指します。アイメイクの残りカスや加齢、脂質の多い食生活が主たる誘因です。
第三の候補が霰粒腫(さんりゅうしゅ)です。マイボーム腺の出口が詰まり、分泌物が周囲の組織に漏れ出して無菌性の肉芽腫(しこり)を形成する疾患です。俗に「ものもらい」と呼ばれる麦粒腫(ばくりゅうしゅ)との決定的な違いは感染源の有無にあります。黄色ブドウ球菌などの細菌感染で赤く腫れてズキズキ痛む麦粒腫に対し、霰粒腫は初期段階では痛みがほとんどなく、触るとコリコリとした硬い軟骨のような感触があるのが特徴です。