現代の妊娠初期において、多くのプレママを最も精神的に消耗させている元凶は、手元のスマートフォンを通じた果てしない情報検索、いわゆる「検索魔」化です。X(旧Twitter)、Instagram、Yahoo!知恵袋などの投稿を分析すると、妊娠初期の女性たちが直面する過酷な心理状態が浮き彫りになります。
知恵袋やコミュニティ掲示板には、「9週 稽留流産 ブログ」「9週 心拍停止 前兆」「9週 つわり 消えた」といったキーワードでの相談が連日無数に投稿されています。検査と検査の間隔が1〜2週間空くこの時期、母親は胎動をまだ感じることができません。お腹の中の赤ちゃんの無事を確かめる手段が存在しないため、自身のわずかな体調変化――「胸の張りが弱まった」「体温が下がった気がする」「下腹部が引きつる」――を流産の兆候と結びつけ、不安を解消しようと検索を重ねてしまいます。
だが、ウェブ上に書き込まれる体験談には強烈な「ネガティブ・バイアス」が存在します。順調に何事もなく9週を通過した大多数の母親はわざわざ知恵袋に「何事も起きませんでした」と長文を書き込みません。深刻な悲哀に見舞われた事例や特異な経過をたどった記録ほど、当事者の感情が込められ検索上位に残りやすい構造があります。
都内の産婦人科クリニックに勤務するベテラン助産師は、診察室での様子を次のように語ります。
「診察券と一緒にスマホを握りしめ、青白い顔で『ネットで9週の壁と見て怖くて眠れませんでした』と涙を流す妊婦さんが毎日のように来院されます。しかし超音波で見ると、赤ちゃんは心臓を元気に動かしている。ネット上の最悪のケースをご自身に投影してしまい、ホルモンの乱れも手伝って自律神経をすり減らしてしまうケースがあまりにも多いのが現場の実情です」