「このほくろ、昔からあっただろうか」「シミの輪郭が以前よりぼやけて広がっている気がする」――こうした疑問を抱いたとき、放置してよいのか、それとも医療機関へ直行すべきなのか。その答えを導き出すための国際的な医学指標が、悪性黒色腫(メラノーマ)のスクリーニングに用いられる悪性黒色腫 ABCDEルールです。
日本臨床皮膚科医会などの専門家組織も推奨するこのルールは、肉眼や拡大写真でチェックできる5つの視覚的変化を定義しています。
- A(Asymmetry:非対称性):中心から2つに割ったとき、左右・上下の形が不均等である。通常の良性ほくろはほぼ綺麗な円形や楕円形を描きます。
- B(Border:輪郭の不正):境界線がギザギザしていたり、毛羽立っていたり、周囲の皮膚へ墨汁が滲んだようにぼやけている。
- C(Color:色調の不均一):均一な茶色や黒ではなく、濃淡が混ざり合っている。黒、茶、赤、白、青っぽい色調が斑(まだら)に入り混じっている場合は警戒が必要です。
- D(Diameter:直径の拡大):病変の最大直径が6ミリメートル以上(鉛筆の消しゴムのサイズが目安)に達している。
- E(Evolving:病変の急激な変化):ここ数か月で急に大きくなった、形や色が変わった、表面が隆起してきた、出血や浸出液が出るといった「時間的変化」が見られる。
日常の診察現場において、皮膚科専門医が最も重視するのは「E(Evolving:変化)」です。数年間まったくサイズや色が変わらない6ミリのほくろよりも、わずか3か月で2ミリから5ミリへと拡大したシミのほうが、皮膚がんの早期発見の兆候として圧倒的に危険度が高いと判断されます。