鏡を大きく開いて舌を前に突き出したとき、奥のほうに並んでいる粒状の突起を目撃して驚く人は多い。舌の奥にできるぶつぶつの正体として、医学的に最も頻度が高いのは解剖学的な正常組織である「有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)」と「葉状乳頭(ようじょうにゅうとう)」の2つだ。
有郭乳頭は、舌の表面後方(前と後ろの境界にあたる「分界溝」と呼ばれるライン)に、喉に向かってV字型、あるいは「ハの字型」を描くように8個から12個ほど整然と並んでいる円形の大きな突起である。成人であれば誰にでも存在し、内部には味覚を感じる「味蕾(みらい)」が密集している。直径は2ミリから3ミリ程度あり、人によってはピンク色からやや赤みを帯びているため、初めて視認した際には「突如として腫瘍が発生した」と錯覚しやすい。特徴は完全に無痛であることと、左右対称に整然と配置されていることにある。
もう一方の葉状乳頭は、舌の後方側縁(奥歯に近い両サイドの縁)に位置するヒダ状の隆起である。ここにも味蕾が存在するが、尖った奥歯や義歯による物理的な擦れ、あるいは体調不良時の免疫低下によって一時的に赤く腫れ上がり、ピリピリとした違和感を覚えることがある。これも正常組織の一部が軽度な炎症を起こしている状態であり、悪性腫瘍ではない。
痛みを伴わない正常な突起と、医療介入が必要な病変を見極める最大の境界線は「配置の規則性」と「時間経過に伴う変化」だ。生まれつきの器官であれば、位置が変わることも、急激に巨大化することも、片側だけに異様な形で突出することもない。まずは深呼吸をし、その突起が左右対称に美しく並んでいないか確認することが冷静な判断の第一歩となる。